Last updated on 2020年9月1日
各文献に書かれてある、梁貫通(スリーブ)補強の可能な径や位置などを表にまとめてみました。
塑性ヒンジ内に梁貫通補強を設けることは原則として認められていません。
塑性ヒンジ内に設けてしまうと、曲げ降伏後に孔周囲がせん断破壊してしまう恐れがあるためです。
各文献で柱からの距離が異なっているのは、塑性ヒンジとみなす範囲が異なっているためです。
「公共標仕(公共建築工事標準仕様書)」では1.5Dとなっていますが、これは、「鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針・同解説 – 1990/11」において塑性ヒンジ領域を1.5Dと定義しており、これに準じて決められたものと考えられています。
「公共標仕」は、公共建築工事の標準仕様書ですが、民間建築工事でも準拠する場合があります。
「RC配筋指針」は、明確な法的な効力はありませんが、RC規準およびJASS5において説明しきれない領域を補間するために、日本建築学会が刊行しているものです。
※表中Dは梁せいを示す。
公共標仕 | RC規準2018 | RC配筋指針2010 | |
径 | D/3以下 | D/3以下(望ましい) | 原則としてD/3以下 |
孔が円形でない場合はこれらの外接円 | |||
上下方向の 位置 |
梁せい中心付近 | (梁せい中心部D/3の範囲) | Dの中心から上下D/6の範囲が望ましい |
梁中央部下端は梁下端よりD/3の範囲は× | |||
柱面からの 距離 |
原則として1.5D以上離す | 塑性ヒンジ域には設けないことが望ましい (塑性ヒンジ域は、16条付着および継手において梁主筋が降伏する領域1.0d(dは有効せい)) |
原則としてD以上離す |
ただし、基礎梁及び壁付帯梁は除く | やむを得ず梁端部に設ける場合には、十分なせん断余裕度を持たせ、孔部分でせん断破壊しないようにしなければならない。なお、塑性ヒンジが形成されるおそれがない場合や、貫通孔が梁せいと比較して極めて小径の場合など、梁端部に貫通孔を設けても支障がないと判断される場合には、設計者がそれらの諸条件を設計図書に特記する。 | ||
並列孔の 中心間距離 |
孔径の平均値の3倍以上 | 孔径の3倍以上(望ましい) | 原則として孔径の(平均値の)3倍以上 |
補強省略可能 な場合 |
孔径がD/10以下、かつ150mm未満のものは、鉄筋を緩やかに曲げることにより、開口部を避けて配筋できる場合は補強を省略可 | 連通管や設備配管用の梁せいに比べて小さな貫通孔は補強を省略されることも多いが、計算上の安全性を考慮して適用条件を設計図書に特記する。 |
梁上下 へりあきh |
記載なし | 原則として | |
梁筋が1段筋の場合:h≧φかつ175程度 | |||
梁筋が2段筋の場合:h≧φかつ250程度 |
時々、設備屋さん、意匠屋さんから梁端(ヒンジ領域)に貫通孔を設けたいという要望がでてきますが、
こういう場合は、ヒンジ領域にも用いることができる以下のような既製品を用いることになります。
現在では、ヒンジ領域以外であっても既製品(ウェブレン、リンブレン、ダイヤレン、スーパーハリーZなど)を用いることが多いのではないでしょうか。
既製品を用いる場合は、既製品ごとに配置できる範囲や、コンクリート強度、へりあきなどの規定が決められているため、上の表によらず、既製品の仕様規定に従うことになります。
【参考文献】
建築技術 No.821,2018,June
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