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RC梁貫通補強の比較表

各文献に書かれてある、梁貫通(スリーブ)補強の可能な径や位置などを表にまとめてみました。

塑性ヒンジ内に梁貫通補強を設けることは原則として認められていません。
塑性ヒンジ内に設けてしまうと、曲げ降伏後に孔周囲がせん断破壊してしまう恐れがあるためです。

各文献で柱からの距離が異なっているのは、塑性ヒンジとみなす範囲が異なっているためです。

「公共標仕(公共建築工事標準仕様書)」では1.5Dとなっていますが、これは、「鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針・同解説 – 1990/11」において塑性ヒンジ領域を1.5Dと定義しており、これに準じて決められたものと考えられています。

「公共標仕」は、公共建築工事の標準仕様書ですが、民間建築工事でも準拠する場合があります。
「RC配筋指針」は、明確な法的な効力はありませんが、RC規準およびJASS5において説明しきれない領域を補間するために、日本建築学会が刊行しているものです。

※表中Dは梁せいを示す。

公共標仕 RC規準2018 RC配筋指針2010
D/3以下 D/3以下(望ましい) 原則としてD/3以下
孔が円形でない場合はこれらの外接円
上下方向の
位置
梁せい中心付近 (梁せい中心部D/3の範囲) Dの中心から上下D/6の範囲が望ましい
梁中央部下端は梁下端よりD/3の範囲は×
柱面からの
距離
原則として1.5D以上離す 塑性ヒンジ域には設けないことが望ましい
(塑性ヒンジ域は、16条付着および継手において梁主筋が降伏する領域1.0d(dは有効せい))
原則としてD以上離す
ただし、基礎梁及び壁付帯梁は除く やむを得ず梁端部に設ける場合には、十分なせん断余裕度を持たせ、孔部分でせん断破壊しないようにしなければならない。なお、塑性ヒンジが形成されるおそれがない場合や、貫通孔が梁せいと比較して極めて小径の場合など、梁端部に貫通孔を設けても支障がないと判断される場合には、設計者がそれらの諸条件を設計図書に特記する。
並列孔の
中心間距離
孔径の平均値の3倍以上 孔径の3倍以上(望ましい) 原則として孔径の(平均値の)3倍以上
補強省略可能
な場合
孔径がD/10以下、かつ150mm未満のものは、鉄筋を緩やかに曲げることにより、開口部を避けて配筋できる場合は補強を省略可 連通管や設備配管用の梁せいに比べて小さな貫通孔は補強を省略されることも多いが、計算上の安全性を考慮して適用条件を設計図書に特記する。
梁上下
へりあきh
記載なし 原則として
梁筋が1段筋の場合:h≧φかつ175程度
梁筋が2段筋の場合:h≧φかつ250程度

時々、設備屋さん、意匠屋さんから梁端(ヒンジ領域)に貫通孔を設けたいという要望がでてきますが、
こういう場合は、ヒンジ領域にも用いることができる以下のような既製品を用いることになります。

   Z-Mダイヤレン工法 https://www.koryo-kenpan.co.jp/products/index/16

現在では、ヒンジ領域以外であっても既製品(ウェブレン、リンブレン、ダイヤレン、スーパーハリーZなど)を用いることが多いのではないでしょうか。

既製品を用いる場合は、既製品ごとに配置できる範囲や、コンクリート強度、へりあきなどの規定が決められているため、上の表によらず、既製品の仕様規定に従うことになります。

【参考文献】
建築技術 No.821,2018,June

 

付着の検討が省略できる場合

RC規準2018年版において、「付着の検討が省略できる場合」についてまとめてみます。

長期荷重に対する梁の通し筋の付着応力度の検討が不要となる場合

・長期荷重を受ける梁で通し配筋としている場合‥両端ともに引張あるいは圧縮を受けているため、通し配筋された梁主筋が左右に滑ることはないと考えてよい。
(柱部材は、一般に長期・短期荷重ともに逆対称に近い曲げモーメント分布となるため、長期荷重に対する付着応力度の検討が必要)

付着割裂破壊に対する安全性の検討が省略できる場合

・全て通し配筋とする場合で、せん断の安全性の検討を行い、大地震動に対して曲げ降伏しないことを確かめた場合。
せん断の検討は、荒川mean式や、規準15条によるせん断の安全性の検討などによる。

※ルート3以外の場合は?(2021/11/03 追記修正…Mさまよりご助言いただきました。ありがとうございます^^)

 RC造の場合は、ルート1,2では「壁量・柱量の確保により十分な耐力、剛性が確保されているために大きな塑性変形が生じる恐れがない」ため、「曲げ降伏しない」と考えることができます。つまり、すべて通し配筋する場合、
 せん断の安全性の検討を行えば、付着の安全性の検討を省略することができます。(黄色本2020 Q&A No.14、RC規準2018 Q&Aより) 

・大地震動に対して付着割裂破壊を生じるおそれがない曲げ材(スラブや小梁、片持梁などの長期荷重が支配的な部材など)

「2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書」の解説において、「付着割裂破壊」が、条文の中の「せん断破壊等による構造耐力上支障のある急激な耐力の低下」に含まれることが明記され、
RC部材の設計ルート全てにおいて付着割裂破壊が生じないことを確かめることとなりました。

では、どうしても付着割裂破壊が「生じる」となった場合はどうするのかというと‥

付着割裂破壊するとなった場合

ルート3の場合は、部材種別を考慮した保有水平耐力計算ができるため、付着割裂破壊が「生じる」となった部材は、脆性部材として部材種別FDとなります。
その他の計算ルートの場合は脆性破壊を考慮した設計ができないため、付着割裂破壊しないようにする必要があります。

付着割裂破壊がNGになりやすいのは、短スパンの梁ですね。ただし、短スパンの梁は大地震時に曲げ降伏しない場合が多いので付着割裂の検討は省略できることが多いと思います。

付着割裂破壊をOKにするには以下の方法が考えられます。
・主筋の間隔を増やして付着強度を上げる。
・スタラップを増やす。
・曲げ降伏しないように主筋を増やす。
などが考えられますが、主筋を増やしすぎると、今度は接合部の設計が難しくなります。
主筋の間隔を増やすと付着強度が大きくなりますので、1段にならぶ主筋本数を減らすと結構OKになったりします。
4/2を3/3にするなどですね。

 


2017年改訂版 RC診断・改修指針のQ&A

2017年改訂版 RC診断・改修指針のQ&A

クリックして2017rc_qa.pdfにアクセス

 

フレーム外袖壁の扱いが明記されていますね。
片持梁が付いていない場合は、雑壁扱い。
片持梁が付いている場合は、袖壁付き柱。

この辺は、まだ各評定委員会毎に扱いが統一されていないかもしれませんね。

新築の計算の場合も、意見がいろいろ分かれています。
規準書等に明記されるまでは、状況により程度を考えて判断するしかなさそうです。