まちの構造屋さん

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高力ボルトの導入張力確認試験は省略してよいか?

投稿日:2020年1月9日 更新日:

高力ボルトの受け入れ時の試験である、導入張力確認試験は省略してよいのでしょうか?

・導入張力確認試験の動画
-042- 高力ボルト現場軸力導入試験】現場に見る建築実務プレミアム100シリーズ

 
 
とりあえず、建築技術とインターネットを調べてみます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・建築技術 No.830 特集 鉄骨造の施工管理力UP術,2019,3, P.90 躯体計画

 〇高力ボルト接合
高力ボルト接合にはトルシア形高力ボルト、JIS高力六角ボルト、溶融亜鉛めっき高力ボルトがあるが、次のような確認が必要である。
(中略)
導入張力確認試験は通常は行わなくてもよいが、行政庁(東京都など)によっては試験を義務付けている場合があるので事前に確認する。

 

7-4 トルシア形高力ボルトの張力試験について

Q
7-4 トルシア形高力ボルトの張力試験について
トルシアボルトに関する現場受け入れ検査の一つとして導入張力を確認する「締付け施工確認試験があります。この試験は、常に必要なものでしょうか。
A
JASS6では、トルシアボルトについては、現場における締付け施工確認試験は基本的に不要としていますが、東京都における建築確認関連の書類(注 いわゆる赤本)では未だに必要とされているようです。これは、東京都内で建築される建築物が対象で、東京都以外ではこのような要求はありません。現状ではトルシアボルトの導入張力は、1次締め、本締めにおいて規定された手順を守れば安定的に得られることが明らかになっています。従って、現場における締付け施工確認試験は基本的に不要なものです。上記の点に関しては、今後関係者に理解を求め、改善してもらうよう努力してゆくしか方法はありません。(注 ぎょうせい「建築工事施工計画等の報告と建築材料試験の実務手引」)

 

全国鐵構工業会青年部会

高力ボルトの軸力導入試験
Question
 高層建築物において、トルシア型高力ボルトの現場軸力導入試験を各階行われる場合がありますが、日本建築学会 鉄骨工事技術指針・工事現場施工編の「第5章 5.3.4」では『未開封のまま現場へ搬入、適切に受け入れ、保管された高力ボルトについては、特別な品質確認は行わなくて良い』とあります。現場軸力導入試験を省略する事は可能でしょうか。
 
Answer
 基本的には、当該工事の設計図書に示されている仕様書に準ずることになります。
公共建築工事標準仕様書(平成19年版)(社)公共建築協会の7.4.5締付け施工法の確認においては「高力ボルトの締付け作業開始までに、工事で採用する締付け施工法の確認を行なう。」となっており、公共建築に対しては、省略するに際し調整が必要となります。民間工事においても、施工契約時における準拠図書、準拠仕様書においてJASS6は契約内容に含まれる仕様であり、設計図書において特記事項を明記しておかなければ、準用されることとなります。鉄骨工事技術指針・工事現場施工編 日本建築学会に準ずることが明示されておれば、問題がないのですが、一般的には公共建築工事標準仕様書、JASS6に準ずることが示されており、その内容における特記事項が示されていない限り、省略するには別途契約に関する調整が必要となります。設計者は積極的に現状に沿った対応を設計図書に記述しておくことが重要です。設計者は、試験省略における特記事項を設計図書に明確に示しておく必要があります。

 

日鉄ボルテン株式会社 高力ボルトのQ&A

2007年に改訂された建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事において、通常は省略してよい試験として位置づけられている導入張力確認試験、いわゆる現場受入検査(通称:現場キャリブ)ですが、施主、設計監理者、施工者の判断により実施する場合がありますので、工事着手前に十分な確認が必要です。

 

Q&A 高力ボルト検査株式会社

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以上から、目ぼしいところを抜き出してまとめてみますと、
・導入張力確認試験は通常は行わなくてもよい。行政庁(東京都など)によっては試験を義務付けている場合があるので事前に確認する。
・JASS6では、トルシアボルトについては、現場における締付け施工確認試験は基本的に不要としている。
・公共建築工事標準仕様書(平成19年版)では、「高力ボルトの締付け作業開始までに、工事で採用する締付け施工法の確認を行なう。」となっているため、公共建築に対しては、省略するに際し調整が必要。
民間建築物でもJASS6に準拠していれば、同様に調整が必要。
「鉄骨工事技術指針・工事現場施工編」に準ずることが明示されておれば、問題がない。→つまり、省略が可能ということか。
設計者は、試験省略における特記事項を設計図書に明確に示しておく必要がある。
・2007年に改訂された建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事において、通常は省略してよい試験として位置づけられている導入張力確認試験、いわゆる現場受入検査(通称:現場キャリブ)ですが、施主、設計監理者、施工者の判断により実施する場合がある。

  ・
  ・
  ・
 う~ん。意見が分かれているようです^^;
「JASS6によれば、通常は省略してよい。」という意見がある一方で、調整が必要(つまり単純には省略できない)という意見もあります。ただ、「高力ボルトの締付け作業開始までに、工事で採用する締付け施工法の確認を行なう。」は、受け入れ時の品質確認の検査とは別物ですよね。なんか混同されている気がします。

これだけでは判断できないので、①「建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事,2015」と、②「鉄骨工事技術指針・工事現場施工編,2018」(日本建築学会)を確認する必要がありますね。
ちなみに②は、①の解説、特記に必要な情報および最新の技術的知見をまとめたものです。②の他に、「工場製作編」があります。

 
・①のP.34、「6.2 高力ボルトの取扱い」から一部抜粋します。

 d.高力ボルトの品質確認のための試験
施工者もしくは工事監理者が特別な理由により納入された高力ボルトの品質を確認しようとする場合は、機械的性質試験導入張力確認試験トルク係数値試験など状況に応じた品質の適否確認を行うことができる。なお、この試験は通常は省略してよい

ちょっとこの文章、わかりづらいです。「特別な理由」とか「通常は」というぼかした表現になっていますね。
この部分の解説となる②のP.249「5.3.4 高力ボルトの品質確認」によると、以下のように書かれています。

JISや認定品は、出荷され未開封のまま現場へ搬入され、適切に受け入れ・保管された高力ボルトについては、特別な品質確認は行わなくてよい。
しかし、
・製造工場に疑問のある高力ボルト
・社内検査成績書を紛失した高力ボルト
・何らかの事情により長期間保管された高力ボルト
などを用いようとする場合は、工事着手前に高力ボルトの品質確認のための試験を行うべきである。
 
トルシア形高力ボルトの品質には、構成部品の機械的性質とセットの導入張力が規定されており、試験内容としては、導入張力確認試験が適している。
高力六角ボルトの品質には、構成部品の機械的性質とトルク係数値が規定されており、試験内容としては、トルク係数値試験が適している。
機械的性質そのものも確認しようとする場合は機械的性質確認試験を行う。

つまり、(JISや認定品を用いる)通常は、品質確認のための試験は、省略してよい。ということになります。これは当然ですよね。
この「品質確認のための試験」は、機械的性質試験導入張力確認試験トルク係数値試験
です。
JISや認定品は機械的性質は担保されていると思いますが、導入張力や、トルク係数値は…どうなんでしょう。。そこがモヤっとします。どなたかご存じないでしょうか。
まあ、①のP.34と、その解説にあたる②のP.249を読む限り、トルシア形高力ボルトで考えると、導入張力確認試験は、通常省略してよいと解釈しても……よさそうです^^;
単に解説文だけで考えましたが…導入張力確認試験、トルク係数値試験が何を目的としているのかを理解する必要がありますね。

ちなみに、受け入れ時の「品質確認のための試験」が終わったら、次に「締付け施工法の確認」という項目があります。

・①のP.39、「6.5 締付け施工法の確認」から一部抜粋します。

高力ボルト締付け工程開始時に工事で採用する締付け施工法に関する確認作業を行う。この作業は、工事用に受け入れた高力ボルトと締付け作業で実際に使用する締付け機を用いて、実際に工事に適用する締付け手順で行う。以下に締付け施工法の確認時の具体的手順を示す。~(以下略)

この節によれば、トルシア形高力ボルト、高力六角ボルトともに、施工法の確認のための試験として、当該工事の接合部から代表的な箇所を複数選定して締付けを行い、「締付け後の検査」に示す要領で検査を行うとされています。高力六角ボルトの場合は、締付け後の検査として「ナット回転法」と「トルクコントロール法」の2つの方法があり、「トルクコントロール法」による場合に限り、(締付け後の検査をするために)締付け施工法の確認をする際に“標準ボルト張力を導入するための適切な締付けトルクを設定しておく”必要があります。
 
 
 
今回の議題とはちょっとそれますが、参考に。
・鉄骨工事Q&A B.工事現場施工編 日本建設業連合会

Q. 高力ボルトの保管期間はどれくらいか?
A.
高力ボルトの保管期間を定めた規定はありませんが、各メーカーの見解としては、1年程度は問題
ないとしているものが多く見受けられます。高力ボルトを長期間保管した場合の問題点として考え
られるのはトルク係数値が経年変化してしまうことです。トルク係数値の経年変化はナットに施した
潤滑剤の成分が経時変化を受けるか否かでほぼ決定されますが、保管状態がボルトメーカー所
有の倉庫内と同程度の状態である場合、1年程度は問題ないとしているようです。
当然、保管状態によってトルク係数値の経年変化は異なりますので、保管期間としては概ね1年を
目安と考えるものの、保管状態・ボルト自体の状況もしっかり見極めるようにして下さい。場合に
よっては導入張力確認試験(トルシア形高力ボルトの場合)、トルク係数値試験(高力六角ボルトの
場合)の再検査を行うことも必要です。

 

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