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「浮き上がりを考慮する」とは

※何年か前に投稿していたものですが、一部文章に分かりづらい表現がありましたので、修正しました。

電算のソフトに「浮き上がりを考慮するorしない」という入力項目があると思います。

 

浮き上がりを考慮するorしないとはどういうことかというと、

 

浮き上がりを考慮する … 変動軸力による浮き上がり力が長期支点反力(基礎自重含む)を超えた時に、支点の鉛直変位の拘束を解除する。

浮き上がりを考慮しない … 支点の鉛直変位を拘束したままにする。

ということです。
「浮き上がりを考慮しない」というのは、転倒しそうになっても、転倒させないように足元をつかんだままにしておくということです。

 

静的荷重増分解析で、耐震壁付きのフレームにおいて浮き上がりを考慮するとどうなるでしょうか。

浮き上がると踏ん張りが効かなくなるので、浮き上がった箇所の耐震壁は効きが悪くなり、ほかの耐震壁や柱がそれ以降の水平力を負担するようになります。

(片足を浮かした状態で横から押されるとすぐに倒れそうになりますよね。)

 

一方、浮き上がりを考慮しないとすると、耐震壁が水平力を負担し続けますから、せん断破壊(脆性破壊)が生じてFDランクとなる可能性が高くなります。

 

静的荷重増分解析で浮き上がったからといって、実際に地震を受けた時に浮き上がるのかというと、「浮き上がらない可能性のほうが高い」です。(実際の地震力は動的なものであるため)

つまり、浮き上がりを「考慮しない」で計算するほうが実情に合っていて、安全側の計算でもあるといえるのです。

ということで、Ds算定時には浮き上がりを「考慮しない」として計算することになっています。(ちなみに、浮き上がりに対するDs値は設定されていませんよね)

同様の理由で、保有水平耐力算定時にも、浮き上がりを「考慮しない」として計算するほうが安全側であるという考えがあります。(黄色本p.393、p.398に解説あり)

 

じゃあ、浮き上がりを「考慮する」必要は全くないのかというと、ちょっと違います。

 

一次設計時にも浮き上がりを考慮するかしないかという設定があり、直接基礎の場合は、浮き上がりを考慮した上で、全体として浮き上がらなければOKです。

全体としてというのは、1スパンの建物の場合、引張側のスパンが全て浮き上がると鉛直、水平変位を止めるものがなくなる状態。こうなると解析自体がストップします。

杭基礎の場合、一次設計時には、杭にかかる引抜き力が引抜き抵抗力を上回らないようにする必要があります。(なお、電算プログラムの中には、初期状態では浮き上がり抵抗力に基礎フーチング自重までは考慮されるが、杭の引抜き抵抗力は、別途、支点耐力を直接入力する必要があるものがありますので要注意です。)

一次設計時に浮き上がりを考慮した解析をするときの注意点は、
 ①直交方向の応力に対しても断面設計する(浮き上がりが発生した時点で支点を解除するため直交部材にも応力が再配分されるため)
 ②水平荷重時の正・負加力時に対して検討する。
 ③浮き上がり抵抗力を適切に入力する。

 

二次設計時には浮き上がりの他に、圧壊というものがありますね。これはなんでしょうか。

 

浮き上がりを考慮するべき建物とは?

・新築建物の場合

平19国交告第594号第4第五号に、「転倒に対する検討」についての規定があります。

これは、地上部分の塔状比が4を超えるようなスレンダーな建物は、「Co=0.3以上とした水平力」or「保有水平耐力時」に対して全体の転倒が生じないことを確かめてください。というものです。

具体的には、「浮き上がり」または「圧壊」が生じないことを確かめます。

 

また、「構造計算適合性判定を踏まえた 建築物の構造設計実務のポイント」(日本建築センター, 平成28年2月10日)によると、

 ただし、支点ピンという条件は、基礎は剛強につくることを前提とした仮定とも考えられます。

搭状比が4未満であっても軸力変動が大きい支点では、搭状比が4を超える場合の検討に準じて、保有水平耐力時にも基礎が支持力を失わないことを、法令外の自主的な検討として確認しておくのが望ましいといえます。

搭状比が4未満でも、支点反力のオーダーを確認して、あまりにも大きいようであれば、転倒の検討を自主的にしておいたほうがいいということですね。

 

・診断、補強物件の場合

既存鉄筋コンクリートの耐震診断基準で、3次診断をする場合。(僕は3次診断はやったことないですが^^;)

鉄骨造の屋体基準(屋内運動場等の耐震性能診断基準)には、F値の表に「引抜きによる浮上り」というものがあり、浮き上がりを考慮することになっています。

 

(参考文献)

・構造計算適合性判定を踏まえた 建築物の構造設計実務のポイント
・2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書
・2015年 構造設計Q&A集

 

補足

・立体解析で浮き上がりを考慮しないで計算して出てくるマイナスの支点反力=「浮き上がり力」は大きな値になっていても、浮き上がりを考慮すると、それほど大きな値にならないことがあります。これは支点に直交する梁(のせん断力)によって押さえ込みが働いているためです。杭の引抜きが大きくなるような建物の場合、浮き上がりを考慮すれば、直交梁の抑え込み効果により杭にかかる引抜き力を小さくすることができます。実際は浮き上がろうとしても直交梁により抑え込みが働きますので、この方が実状に合っていると思います。その代わり、直交梁にも応力がかかってきますので、直交梁の断面算定が必要です。

 

・基礎が浮き上がるのは、変動軸力が長期支点反力を上回るためです。長期軸力が小さい箇所に基礎を設けていると変動軸力で浮き上がる可能性が高いです。建物の中間部にあって浮き上がるような場合、逆に基礎をのけてしまう方が合理的な場合もあります。

 

 

 

 

計算ソフトの3Dモデル表示機能に対する要望

一貫計算ソフトにはモデルを3D表示させる機能がありますが、
ウォークスルー機能があれば見やすいんですけどね。。

特に木造とかだと細い部材が込み合ってるから全体表示で
ぐりぐり回しても見づらい。
架構を理解していないというわけではないですよ?
ただ、ウォークスルーで見られたら、より一層分かりやすくなると思うんです。

ウォークスルー機能があれば、実際に建物の中を歩いている感覚で
架構を見ることができるので、是非とも実装してほしいところです。

意匠系のCADにはありますよね。

剛床・剛床解除について

電算ソフトでは、鉛直荷重時と水平荷重時それぞれについて剛床or剛床解除の設定をすることができます。

■X方向のみの平面フレームを考えた場合、

鉛直荷重時に剛床とすると、同一層における各節点のX方向変位が全て同じになります。
しかし、Z方向変位は必ずしも同一にはなりません。
節点の上下移動などを指定していると、柱梁の軸変形により、Z方向の変位は同じになりません。
また、柱の長さが同じでも、軸剛性が異なる柱がある場合も、Z方向の変位は同じにはなりません。

X方向の水平荷重時に剛床とすると、同一層における各節点のX方向変位が全て同じになります。

■立体フレームを考えた場合、

建物が偏心している場合、荷重が作用したときに床面が回転するため、
剛床としていても、水平変位(X方向、Y方向)は同じにはなりません。

つまり、剛床仮定にすると、鉛直・水平荷重時ともに
床を上から見たときに、床面の形が変わらないということになります。

つづく。

パラペットの風圧力

パラペットにかかる風圧力の電算での考慮。

RC造の場合は、パラペット入力をするから忘れることはないんですが、

S造のとき、パラペットがRCで立ち上がらなかったりするときに、パラペットの荷重だけ

特殊荷重なんかで入力しとけばいいや。ってなりがちなんですが、それだとパラペットにかかる分

の風圧力が考慮されないことになりますよね。。

まあ、通常の建物の場合、風<地震になってそんなに気にしなくてもいいんですが、

整合性をとる。実状通りに計算するという意味では、パラペット入力を忘れないようにしよう!ってことです^^;

 

仕上げ重量に要注意

鉄骨のちっこい平屋をSS7などの一貫計算ソフトで計算する場合、
仕上げ重量を考慮するかどうかで、だいぶ重量が変わってきます。

SS7では仕上げ重量がデフォルトで500N/㎡考慮されます。

これは、25mmのモルタル塗りをしている状態ですが、
これを見込むと自重が2倍ぐらいになったりします^o^

基礎設計への影響が大きいので、要注意ですね!

端部の断面算定位置など

■端部の断面算定位置と応力採用位置  
端部の応力採用位置は、通常、長期は節点位置とし、短期は断面算定位置(剛域端)とする。  
設計用曲げモーメントは、通常、「剛域端」の方が「壁端または梁・柱面」より大きくなるため「剛域端」でよい。  
一方、設計用せん断力を求める際の内法寸法は、「剛域端」間よりも「正味内法=壁端または梁・柱面」間とした方が安全側となるため、
別途、「2.4.1共通事項」の3「内法寸法の取り方」で剛域端間か正味内法を選択できるので、「正味内法」を選択すればよい。   

<直接入力する場合>    
端部断面算定位置→「12.7.3 端部断面算定位置」で入力    
内法寸法    →「12.7.4 Qy(QM)算定用の内法寸法」で入力  
壁開口がある場合の剛域の取り方は、「2.1 剛性計算条件」の5「剛域長の計算方法」で長方形とするか、45°隅切りか、  さらに、入り長さの倍率を指定することができる。  

SS3では、端部の断面算定位置が、そのまま危険断面位置(ヒンジ発生位置、降伏判定位置ともいう)  に設定されるので要注意。

RC柱部材種別判定時に使用するho/Dのhoは、「端部の断面算定位置」で指定する危険断面位置間ではなく、  
「内法寸法の取り方」(直接入力した場合は「Qy(QM)算定用の内法寸法」)の指定による。  

<SS3の計算データをリンクさせて耐震診断を行う場合>  

・F値を算出する際の内法長さhoは、SS3で用いたhoがリンクされる。   
ウォールガーダーなどがあり、hoを直接入力したい場合は、SS3の「Qy(QM)算定用の内法寸法」で入力する。  
 (耐震診断2001「柱の内法寸法」でも入力できる)

★変更★・複数開口がある場合のhoの取り方は、SS3における剛域の取り方(長方形で包絡or45°隅切り)とは関係なく、   
長方形で包絡されるため要注意。また、隣接するスパンに開口がある場合のhoの取り方も、あくまで新耐震設計に準じた計算をされるので要注意。

・RC柱部材種別判定時のhoの採用について  http://www.unions.co.jp/dqs/qa/01887.html

・【検証例】せん断設計 梁のQM、M/Qdの計算方法について http://www.unions.co.jp/dqs/qa/02187.html  
・SS3のマニュアル ・RC診断2001のマニュアル (関連)  黄色本p.359 (2)鉄筋コンクリート部材のせん断破壊の防止(保証設計) http://support.kozosoft.co.jp/q_and_a_ver7.nsf/6308e623f565ab4d4925760200218c82/840a5dc29dd04a45492575fb003709f2?OpenDocument

高さが変わると何が変わる?

階高が変わると、構造計算上、何が変わるでしょうか。

設計には変更がつきものです。

というか設計変更のないまま終わることなどありません(´-ω-`)

設計変更があったときに、構造計算のどこに影響するのかを瞬時に判断し、スマートに対応できれば、かっこいいですよね。

 

例えば、

鉄骨造で高さHが高くなった場合、何に影響するか。

高くなる度合にもよりますが、変更になった場合に影響が大きいものから順にチェックしていきます。

 

・ルートを変更する必要はないか?(ルート1の場合、高さ13m、軒高9m以下)

・固有周期Tの値が大きくなる

→Aiが変わる。設計用地震力が増える。(ただし、1階建ての時はAi=1.0で変わらない。)Rtは多分変わらない。

・柱と壁が伸びた分、重量が増える。長期軸力、設計用地震力が増える。

→柱梁の断面算定、基礎の設計のチェック。

・層間変形角が大きくなる。剛性率も変わる。

・風荷重が変わるかも。速度圧q、風力係数Cfのチェック

 

・間柱も伸びる。間柱の計算の再チェック。

・縦胴縁も伸びる。縦胴縁の計算の再チェック。

・構造図(軸組図、詳細図、基礎も?)の修正

・計算書に記入する高さを修正する。

 

と、これぐらいは影響してきます。

まぁ、高くなる変更は、コストに与える影響も大きいのであまりないですが。

見積もり出したけど、予算オーバーしたから低くするっていう変更のほうが多いでしょうね(笑)

 

偏心率がおかしい

平面的に不整形な建物の立体解析をしたら、偏心率がおかしな値になってしまいました(^^;

 

まあ、予想はしていたのですが、ソフトの仕様上、「ねじり剛性や水平剛性が0または負になった場合はFeを1.5とする。」となっていたのです。

おかしな値になった場合は、計算できないので上限値をとりますってことですね。

これでは説明できないので、なんとかしなければ(^^;

ってことで、計算マニュアルなどを見直しておこうと思います。

 

■偏心率の計算

①応力解析(一次設計)

②重心位置の計算

概算軸力(各節点の重量の累計)or 長期軸力による。

③剛心位置の計算

応力解析で得られた層せん断力と層間変位から、各鉛直部材の水平剛性を求め、それをもとに剛心位置を計算する。
理論式(「構造物の振動」を参考に剛床の回転中心を剛心位置として算定する方法)or 基準解説書による(並進架構(各階が水平力作用時にねじれを生じず、かつ、同一の水平変位となるような架構をいう。)とし、不整形な建築物は対象外となる。

 

・鉛直部材の水平剛性
鉛直部材の水平剛性は、主軸方向と一致する地震力の結果を用いて計算するが、主軸方向と地震力の方向が一致しない場合、地震力の結果を組み合わせて計算する。
(X正Y正、X正Y負、X負Y正、X負Y負の4通り。雑壁の考慮or考慮しないを入れたら8通り)
剛心位置は、当該階が剛床であるとき、水平力をどの角度で作用させても剛床が回転せずに純粋な並進性変位が生ずる位置。

 

④ねじり剛性と各方向の水平剛性

ねじり剛性KRと各方向の水平剛性(KX、KY)から弾力半径を求め、弾力半径/偏心距離=偏心率

 

※KR,KX,Kyのいずれかが0または負値となる場合、Feを1.5とされる。

 

・主軸方向の算定
理論式を用いて剛心を計算した場合、各階の剛性の主軸方向θを計算する。
水平力を剛心位置に作用させたとき、加力方向が主軸方向であれば、加力方向と変形の方向が一致する。

 

■剛性率の計算
剛心位置の層間変位と当該階の標準階高より求めた層間変形角を用いて剛性率を計算する。
各階の層間変形角の逆数rs、地上部分についてのrsの相加平均より、剛性率を求める。

 

■層間変形角の計算
すべての柱について計算し、最大の層間変形角により判定する。
層間変位は加力方向成分を採用する。

 

(参考文献)

・「SS7マニュアル(計算編)」

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(株)構造ソフトの技術情報、偏心が大きくなる要因と計算方法により異なる剛心位置の注意点は参考になりますね。

「BUILD.一貫Ⅳ+」では、耐震壁が斜めに配置されたような場合でも、正確な剛心位置の計算ができる「改良理論法」が使用できるようです。上で書いた理論式は、従来理論法にあたるようです。

この改良理論法は、「不整形立体架構の剛心と偏心率の計算方法の提案」(栗田哲、吉村 貴司、千葉一樹) 日本建築学会大会学術講演梗概集 2010 年 9 月) に書かれているようです。