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軽鋼構造設計施工指針とは?

Last updated on 2023年6月14日

現在、非住宅(住宅以外)の鉄骨構造は重量鉄骨により設計されることがほとんどだと思いますが、稀に軽量鉄骨で作られているコンビニなどを目にすることがあります。平屋のコンビ二程度であれば、施工性の良さや軽さから、軽量鉄骨を採用するのもありなのでしょう。減価償却や解体のことも考えられているのかもしれません。建設現場の仮設事務所なんかはほぼ軽量鉄骨ですね。

ただ、この軽量鉄骨、私のような若め?の構造設計者には馴染みが薄いです(^^;
大学でもほぼ習いませんでしたし、設計をしたこともありません。
現在でもハウスメーカーでは軽量鉄骨も使われていますので、規格化されて大量生産されるものでは重量低減、材料費削減、重機の簡素化のメリットが大きいのでしょう。

この「軽鋼構造設計施工指針」ですが、何回か名前が変わっているようですね。

 

「軽鋼構造設計施工指針」の変遷

指針の変遷を、鋼構造計算規準などもからめてまとめると、以下のようになりました。

戦後、昭和25年(1950年)は、建築基準法・建築士法が施行された年です。
これから特に住宅の復興が政府の重要施策として行われるようになり、木造の在来軸組構法住宅や、(1960年頃から)枠組壁工法(ツーバイフォー)の住宅が大量に供給されるようになりました。
同時に、鉄鋼業などの資材産業の復興が進み、資材統制や建築制限が撤廃・緩和され、朝鮮戦争特需などの好況も影響して、RC造およびSRC造主体の第1次ビルブームも出現しました。

戦後の日本の自立経済を重工業化に求めるGHQの政策と、国内での傾斜生産方式の国策によって、日本の鉄鋼生産は飛躍的に増大しました。

昭和30年頃からは、戦時中の乱伐で荒廃した森林資源の保護と、木材の代替資源の開発を目的とする森林法の改正を受けて、木造建築に変わる低層不燃建築供給への政策的要求、需要開拓の動き等から、鉄骨造の公営低層集合住宅や学校建築が建設されるようになりました。(軽量形鋼は昭和30年、中之島製鋼が圧延を開始)
圧延形鋼は山形鋼、みぞ形鋼、I形鋼が戦前から使用されていましたが、昭和36年(1961年)に、圧延H形鋼が生産されはじめ、鉄骨構造が急増しました。
1975年からは冷間成形角形鋼管が使用され始めました。

つまり、順番で言えば軽量鉄骨、軽量形鋼 → 重量鉄骨なんですね。当時はロール圧延で作る重量鉄骨も高力ボルトもなかったため、軽量型鋼を溶接やリベットで接合して組み立てることで断面性能の大きいものを作っていたということですね。

 

「軽鋼構造設計施工指針」の適用範囲

指針には適用範囲が以下のように書かれています。

1.1 適用範囲

(1) この指針は、主として厚さ6mm以下の薄板部材を構造部材として用いる軽鋼構造物の設計施工に適用する。

(2) 対象とする建築物は、3階建て以下とする。

(3) この指針に規定のないかぎり、日本建築学会「鋼構造設計規準」,「鉄骨工事技術指針」による。

 

1.3 構造耐力上主要な部分の板厚

柱・はり・小屋梁など構造耐力上主要な部分などに使用する材の厚さは、2.3mm以上とする。

また、上記(1)の解説には、

鋼構造物の構造設計は、すべて「鋼構造設計規準」によって行われるが、薄板部材を構造部材として用いる鋼構造物では、部材・接合などに特異な点もあり、設計上配慮すべき点も多い。したがって、設計および施工上、特に注意する必要のある事項をここに指針としてまとめたものである。

とあります。

薄板の断面を用いるということで、断面算定においては以下のような特徴があります。

・軽量形鋼部材はねじれに対する剛性が小さい上、重心とせん断中心が一致しないものが多いため、曲げねじれ座屈に配慮する必要がある。単一山形断面などの曲げねじれ座屈が先行する部材では、有効断面積による低減係数を用いた許容圧縮応力度とする。

・横座屈のおそれのある部材は、サンブナンのねじりに関わる項を無視した、指針独自の式により算出した許容曲げ応力度とする。

・集中荷重を受ける梁は、荷重点付近のウェブの局部破壊を避けるための検討を行う。

この指針では以下のような設計例が掲載されています。

・スパン4mの2階建ての住宅(柱に2C-200×75×20×4、梁に2C-125×50×20×3.2、壁ブレースにL-75×75×6等を用いた1方向ラーメン1方向ブレース架構)

・梁間スパン18mの平屋倉庫(柱,梁にLH-350×175×4.5×6、繋ぎ梁に2C-100×50×20×2.3、壁ブレースに1-M20等を用いた1方向ラーメン1方向ブレース架構)

・スパン6.3mの3階建ての事務所(柱に□-250×250×9、梁にLH-400×200×4.5×9等を用いた2方向ラーメン架構)

 

「薄板軽量形鋼造」の場合は、基本的に枠組み壁工法のように両方向に耐力壁が必要となりますが、本指針では、ラーメン架構とすることが可能です。

 

【参考文献】

・「建築技術」1999年4月号 特集 建築鉄骨の発展を考える

【関連サイト】
プレハブ建築の歴史

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